中国家電メーカーの「出海」が本格化——2025年業績データが示す世界市場攻略の実態
なぜ今、中国家電の海外展開に注目すべきか
「中国製品は安かろう悪かろう」——そんな時代は、すでに過去のものになりつつあります。
2026年5月に中信建投証券が発表した最新レポートによると、中国の家電・スマートハードウェア業界において、海外市場が文字通り「成長の核心エンジン」となりました。国内市場が補助金政策(以旧換新)の反動や不動産市況低迷の影響を受けて伸び悩む一方、海外では中国メーカーが着実にシェアを拡大し続けています。
関税引き上げ、人民元の変動、激化する価格競争——逆風の中でもこれほどの海外展開が進んでいるという事実は、日本のビジネスパーソンや投資家にとって見過ごせないシグナルです。
「出海」が成長の核心エンジンになった理由
国内市場の”前高後低”と海外の底堅さ
レポートが示す業界全体の構造を一言で表すなら、「国内:前高後低、海外:着実に拡大」です。
国内では、2025年前半は政府の家電買い替え補助金(以旧換新)の恩恵で収入が急増しましたが、2025年Q4以降は補助金効果の剥落と高い比較基準により、多くのサブセクターで収入・利益が前年比マイナスに転落しました。
一方、海外市場では状況が異なります。白物家電(白電)の大手3社の海外売上成長率を見ると:
| 企業名 | 2025年海外収入 | 海外成長率 | 国内成長率 |
|---|---|---|---|
| 美的集団(Midea) | 1,959億元 | +15.92% | +9.40% |
| 海尔智家(ハイアール) | 1,545億元 | +8.15% | +3.05% |
| 海信家電 | 454億元 | -5.38% | +6.44% |
美的集団では海外成長率が国内を大きく上回り、海外売上の45%以上がすでに自社ブランド(OBM)商品となっています。単なるOEM輸出から脱却し、ブランドビジネスとして海外市場を攻略している姿が浮かび上がります。
「黒電(テレビ)」の中国時刻——海信とTCLの世界制覇
最もドラマチックな変化が起きているのが、テレビを中心とする「黒電(黒物家電)」セクターです。
2025年、海信とTCLの両社のテレビ販売台数は合計で約6,100万台に達し、韓国のLG(約2,184万台)を大きく上回りました。三星(サムスン)の約3,692万台と合わせた世界上位4社のうち、中国勢2社が台数シェアでトップ2に躍り出たのです。
しかも収益面でも改善が続いています:
- TCL電子:純利益率 2.18%(2023年比+1.24ポイント)
- 海信視像:純利益率 4.25%(2023年比+0.34ポイント)
対照的に、三星とLGのテレビ事業収入は2025年に前年比でマイナス成長を記録。レポートはこの状況を「中国時刻(中国の時代)」と表現しています。
具体的データで見る「出海」の深度
美的集団の海外戦略:50カ国への自営展開
美的集団の海外展開の速度は特筆に値します:
- 自営現地法人のカバー国数:2024年の27カ国から2025年に50カ国へ拡大
- 海外EC売上:前年比+35%以上、英国・フランス・イタリア・韓国・ブラジル・アルゼンチンでは成長率+50%超
- 日本市場:東芝ブランドで展開する白物家電6品目の合計小売シェアが16%以上に上昇
特にヨーロッパでは高級キッチンブランド「TEKA」の買収を完了し、多ブランド戦略でクロスセリングを推進。欧州全体の収入が二桁成長を達成しました。
海信家電:全方位の地域展開
海信家電の地域別2025年成長率は海外戦略の総合力を示しています:
- 欧州:白物家電収入 +22%(洗濯機 +38%)
- 北米:家電収入 +13%(食洗機 +56%)
- 南米:白物家電収入 +28%(冷蔵庫 +43%)
- 東南アジア(ASEAN):自社ブランド収入 +23.5%
モーターサイクル・レジャービークル:次の”出海”主役
家電以外でも「出海」の波は広がっています。モーターサイクル・レジャービークルセクターでは、春風動力と隆鑫通用が海外市場で急速にシェアを拡大。特に春風動力の燃油バイク海外売上は2025年に+21.88%増と力強い成長を遂げています。
また、涛涛車業はゴルフカートの東南亜・米国への生産拠点展開を先行させたことで、関税戦争の影響を回避しながらシェアを急拡大。2026Q1の収入成長率は+65.66%に達しました。
日本企業・日本人への影響と示唆
キャリアへの示唆
中国家電の海外展開が加速するなか、いくつかのキャリア機会が浮上しています:
- 現地化人材の需要増加:美的・ハイアール・海信などが欧州・日本市場での拠点を強化しており、日本語対応のマーケティング・営業・ロジスティクス人材の需要が拡大しています。東芝白物家電(美的傘下)の日本市場シェア16%超という実績は、その規模感を示しています。
- 中国市場調査・コンサルティング:関税対応や生産拠点の多元化(東南アジア・トルコなど)で、日系企業が持つ知見や人脈を活かした支援需要が増えています。
- テクノロジー・製造分野:TCLの索尼(ソニー)との戦略提携、海信の世界杯(ワールドカップ)スポンサー活動など、日系企業との接点も増加傾向にあります。
ビジネスへの示唆
日本企業が取るべきアクションは明確です:
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競合分析の更新:テレビ・エアコン・冷蔵庫など各品目で、中国メーカーの実力を過去のイメージで評価していないか再点検が必要です。販売台数では海信・TCLがすでに韓国勢を上回っています。
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OEM・供給網の見直し:清洁電器(掃除機ロボットなど)の代工(OEM)企業は、関税と為替変動で2026Q1に利益が80〜90%超の下落を記録した例もあります。中国メーカーを製造委託先として活用している場合、リスク分散戦略の検討が急務です。
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投資機会の精査:白電セクターは美的集団(分配率74.35%)・格力電器(配当利回り約7.78%)・海尔智家など、高配当・株主還元強化銘柄が増えており、中国株ポートフォリオの安定的収益源として注目できます。
まとめ:3つのポイント
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中国家電の「出海」は量から質へ転換——単なる数量拡大ではなく、自社ブランドによる高付加価値展開(OBM比率の向上、現地法人の拡充、M&Aによるブランド獲得)が進んでおり、単純な「安値競争」との差別化が明確になっています。
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テレビ(黒電)は「中国時刻」へ——海信・TCLの台数シェアが三星・LGを超える局面が到来。収益性も継続改善しており、中長期的な競争力の定着が見込まれます。TCLの索尼との提携や海信のW杯スポンサーは、さらなるブランド力向上の触媒となる可能性があります。
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関税・為替リスクは引き続き注意が必要——2025Q4〜2026Q1にかけて、財務費用率(為替損失)の大幅上昇が白電・清洁電器・モーターサイクル各社の利益を圧迫しています。投資判断においては為替ヘッジの状況と製造拠点の多元化度合いを必ずチェックしてください。
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